これからの時代を生き抜く力
先月、大学院時代の友人に誘われ、タイに行ってきました。彼は東京にある私立大学・教育学部の教授で、毎年、学生を授業としてタイに連れて行っています。その事前打ち合わせをするのに同行しました。もちろん訪問したのは、タイの幼稚園・小学校・中学校そしてスラムです。タイには今までネパールに行く途中で寄ったり、日食を見に行ったり、少しの観光をしたことがありましたが、学校訪問をしたことはありませんでした。
最初に行ったのは、バンコク都立のワットベンジャマボピトゥ幼稚園・小学校でした。この学校は、都立(公立)ですが、英語とタイ語で授業を行うバイリンガル・スクールでした。訪問した時には、全校で朝会をしていましたが、ほとんど英語で行われており高学年児童による楽しいパフォーマンスも英語の歌と踊りでした。私も子どもたちの前で英語で挨拶をしましたが、もっと楽しいことができたら良かったと悔やみました。40人ほどの職員のうち10人ほどが外国人教師(フィリピン)で、授業も英語とタイ語でした。算数や理科はもちろん英語で英語のテキストを使っていました。英語を生き抜く手段として使えるようにしているそうです。「One day one word」を掲げ語彙力をどんどん増やしていました。授業形態は日本のように黒板に向かい並んでいるのではなく、グループごとにまとまり、先生はパワーポイントなどで、映像を見せながら、実際に作業をさせるような授業をしていました。朝食・昼食、保険、健康診断、教科書、ワークブツク、制服、体操服まで無償で提供されているようです。幼稚園から小学校高学年まで授業を参観しました。どの学年でも子どもたちがみんな笑顔で、楽しそうに学んでいました。「これが公立の小学校?」と正直、驚きました。
次に私立のパタイウドンスクサ学校を訪問しました。この学校は小学校ですが、入試があり優秀な子どもたちに「Gifted Education」のプログラムを実践していました。子どもたちが持っている素晴らしい才能を見つけ、それを専門の先生が個別に伸ばしていく教育です。心理学が専門の先生を筆頭に25人程度の先生がそれに関わり、提携している外国の学校から先生が来たり、子どもがその学校に留学したりもします。子どもたちは自分が好きなこと、興味があることを、先生の指導のもと、立派な図書館や施設を使い、目を輝かせて学習していました。この学校でも英語が日常的に使われており、健康食の実習をしていた子どもたちが、私たちに流暢な英語で、次々にしていることを我れ先に、目を輝かせて説明してくれました。廊下に「Try to speak English more 」と書かれた看板が掲げられており、日常的に英語が使われていました。校長先生から学校経営の理念を聞きましたが、とても明快で信念と凄さを感じました。
バンコク・クリスチャン・カレッジを訪れました。この学校はタイで初めての男子校で、小学校から大学まであります。訪問すると副校長先生から在籍している日本人の小学生を何人も紹介され、一緒にティータイムを楽しみました。その後、この学校の教育博物館を案内されました。案内してくれたのはインディーという高校生でしたが、流暢な日本語で、タイの歴史、キリスト教との関連、日本との関連、科学技術のことなど多方面にわたって豊富な映像と資料に基づいて案内してもらいました。彼は先年、ロンドンで行われた科学技術のオリンピック?に、地学分野のタイの代表として参加したそうで、とても利発ながら融通性を持った素敵な青年でした。この高校生も、そして日本人の小学生も、英語、タイ語、そして日本語の三カ国語をとても上手に使っていました。
訪問したどの学校も「ASEAN(東南アジア諸国連合)」を意識して、共に発展していく教育を実践していました。 タイ教育の最大の課題は、都会と田舎の教育レベル・内容の格差だそうです。もちろん東京や大阪には特徴的な素晴らしい学校がたくさんあります。しかし岡山に住み岡山の教育ばかりを見ている私には、とても新鮮で、今後の子どもたちに何が必要なのかがはっきり分かったタイ旅行になりました。