人望・徳について

人望・徳について

 

 少し古い本になりますが、山本七平『人望の研究』(祥伝社)1991年から、人望・徳について紹介します。次の九徳を書いて台所に掲示し、折にふれわかりやすくお話をして、親子共々、身につけたいものです。

 これからの社会、リーダ選出の要件として人望が更に大切なものになっていきます。では人望とはどのようなものでしょうか。これについてはが『』という本の中で「最もまし」と言っています。近思録は朱子学が絶対であった江戸時代から明治・大正・昭和と読み継がれましたが、戦後忘れられてしまいました。この書の「九徳」は世界中どこに行っても通用する徳目で、幕末から明治のはじめに欧米に行った使節団が高い尊敬を勝ち得た根本のものといわれています。

 九徳は中国のの臣、が舜帝の面前で語ったものとされています。

 (1)にして  (寛大だが、しまりがある)

 (2)にして (柔和だが、事が処理できる)

 (3)にして (まじめだが、丁寧でつっけんどんでない)

 (4)にして  (事を治める能力があるが、慎み深い)

 (5)にして (おとなしいが、内が強い)

 (6)にして (正直・率直だが、温和)

 (7)にして  (大まかだが、しっかりしている)

 (8)にして  (剛健だが、内も充実)

 (9)にして (だが、しい)

 それぞれの2つの言葉には相反する要素があり、その1つが欠けると不徳になります。「寛大だが、しまりがない」では不徳だから、片方がなければ「九不徳」になります。さらに両方なければ「十八不徳」になります。例えば「こせこせうるさいくせに、しまりがない」「とげとげしいくせに、事が処理できない」「不真面目なくせに、尊大でつっけんどんである」「事を治める能力がないくせに、態度だけは居丈高である」「粗暴なくせに、気が弱い」………

 普通の人は大体一方が欠ける「九不徳」で次のようになります。

①寛大で結構なのだが、しまりがない ②柔和でありがたいが、何も処理できない

③まじめだが、とっつきにくい ④事を治める能力があるのだが、尊大で高飛車だ

⑤おとなしいが、しんがない    ⑥正直・率直なのだが、冷たい

⑦任せっきりは結構なんだが、何もつかんでいない

⑧一見強いんだが、内はからっぽ  ⑨強勇なのは結構だが、無茶をするから困る

 

 『近思録』によれば、まず九徳を暗記し、これを果断に行い、固く実践していきます。すると人徳が備わってくると書いてあります。

 これから実社会の中で生きていく我が子が、周囲から尊敬され頼りにされる人物になってもらいたいと願うのは、親として当然のことです。そのためにも九徳について理解し、お話しをし、親子で実践し、九徳をつけていきたいものです。

                                ( 建 治 )