親の言うことを聞かない子

 『うちの子は、私の言うことを聞かなくて、困っています。』『お父さんが激しく言っても、なかなか聞きません。』『乳児の頃は可愛かったのに……』この相談はよく聞きます。『お子さん、成長されていますね。楽しみですよ。』と私は笑顔で答えています。

 子どもが言うことを聞かなくなった時は、成長の一つのステップです。自我が現れ、それを表現し、自己主張をします。子どもには、この過程がとても大切です。いつまでも親の言うことを「はい」「はい」と言って聞き、素直に動く子どもは、ある意味で心配です。子どもはいずれ親元から離れ、自立していかなければなりません。自分で自分のことができ、自分の意志を明確に示し、行動できる力が必要です。その練習をしているのです。一番信頼し、愛情を感じている人に対して、自己主張をしてみせます。それがあなたなのです。

 子どもが言うことを聞かなくなった時は、あなたも親として、人間として、成長していくチャンスの時です。子どもを一人の人間として認め、言うことをきちんと聞いてあげることが一番大切です。なぜできないのかを言葉で言えるようにしましょう。『なぜできないの?』と穏やかに聞いて、辛抱強く回答を待ちましょう。自己表現の練習です。屁理屈でも我が儘でもOKです。自分で考えて自分の言葉で表現・主張ができることが大切なのです。『どうしても!』という回答は受け付けません。気持ちを代弁してあげるのはやめます。両手をしっかりと掴み、目を見て、穏やかに『どうしてできないの?』とまた聞きます。自分の行動について自分の頭で考えることが大切なのです。言うことができたら、内容はともかく、しっかりと誉めてあげましょう。『よく言えたね。立派だよ。大きくなったね。』と。

 子どもが言う内容には、納得できるもの、屁理屈、我が儘や、他人に迷惑のかかること、面倒だから、たいぎだからなども含まれています。何を聞き入れ、何をダメにするのか、親の良識・生き方が試されます。子どもを一人の自立した人間として尊重し、丁寧に分かりやすく子どもの言葉で話をしましょう。我が儘のいくつかは、我慢させます。他人に迷惑のかかることは、説明して禁止します。面倒・たいぎについては、生き方を教えます。この子どもを尊重した話し合いこそが親としての大切な一番大切な仕事なのです。まさに生き方を一緒に考え、教えていくことなのです。もちろん年令により、お子様により、話しの内容は異なってきます。

 子どもが自立へのステップとして、わざと言うことを聞かず、親を困らせている時もあります。その時は、むきにならず、平然と笑顔で受け流しましょう。一緒に楽しく遊んだり、抱きしめたりしているうちに、その行動は収まります。

 我が子は、自分の分身ではありません。一番身近な一番大切な他人です。一番幸せになってもらいたい人です。そのためにあなたがすることは、幸せな自立へのお手伝いなのです。とても楽しく、やりがいのある仕事です。( 建 治 )

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