メディアに注意!

私は地域の幼・小・中学校の地域協働学校運営協議会の会長を長年しています。学校園の運営についてアドバイスをしたり、地域と連動をはかり学校園を支える仕事です。その会で子どもたちがメディアと頻繁に接触していることが問題になり、10年前から取り組みを始めました。一日2時間以上メディアと接している子どもが相当います。それが人間形成や学業成績に影響しているのです。調べてみると大変なことが分かりました。

まず最新の脳の研究から分かったことです。文章を書いている時の脳は、全体が活発に活動しています。しかし、手と目を使ってゲームをしている時の脳は、視覚部以外は全く働いていません。実体験と映像体験でも同じような結果が出ました。実際に蛍を見ている時には、脳は活発に活動していましたが、テレビで蛍を見ても脳は活動しません。

脳は活動することによって発達します。脳の形成過程にある子どもの時期に、長時間メディアに接していると、脳は十分に発達することができないのです。またある時期(臨界期)までに発達できなかった脳は、その後いくら訓練を重ねてもうまく発達しないのです。

さらにメディアに接している間は、脳の中で人間らしい活動をつかさどる前頭前野という部分は全く活動しませんでした。前頭前野は感情をコントロールしたり創造力を発揮したりするところです。その結果いわゆる「きれやすい」子どもになる可能性が高くなり、人間性形成上にも問題があることが判明しました。またテレビなどの内容には、暴力的であったり、悲惨な映像など、子どもの心の形成上あまり好ましくないものも頻繁に出てきます。

眼の問題もあります。テレビ画面のような平面で見ていると、立体視力がなかなか育ちません。これはIT眼症と呼ばれ距離感がつかめないのです。また高輝度の画面を長時間見ていると視力も悪くなります。

テレビ放送が始まって70年が経ちました。テレビやビデオ、パソコンやネットに囲まれて育った世代が親になり、赤ちゃんへの授乳をテレビを見ながら、メールを打ちながらしたり、スマホやゲームで子守(電子ベビーシッター)をさせたりするような場面も見られます。またせっかくの夕飯後の団欒の時、会話がなく、各自がそれぞれのメディアで遊んでいるようなこともあります。目でジアハ、親子の愛着形成を阻んだり、子どもの身体や心、言葉の発達を阻害することもあるのです。

メディア漬けで育った子どもは、次のような行動が見られるそうです。表情が乏しい。指さしができない。視線が合いにくい。呼んでも振り向かない。テレビを消すと嫌がる。テレビの中の子どもは喜ぶが、生身の子どもを恐がる。コミュニケーションが取りにくい。癇癪が激しい。言葉が激しい。言葉が遅い。言葉はしゃべるが会話にならない。奇声を発する。かん高い裏声でしゃべる。おもちゃを触ろうとしない。おもちゃを並べる遊びを繰り返す。汽車かミニカーでしか遊ばない。多動すぎる。次から次へと遊びが移る。段差が見えないかのように真っすぐ歩く。

この危機的な状況を心配して、2004年に小児科のお医者さんのグループ「日本小児科医会」が、「子どもとメディアの問題に対する提言」を出し、注意勧告しました。5つの提言の要旨は次のようなものです。

①2歳までのテレビ、ビデオ視聴は、早期教育ビデオも含め控える。

②授乳中、食事中のテレビ・ビデオ視聴はやめ、団欒にする。

③すべてのメディアへ接触する総時間を制限し、ノ―メディアデイをつくり実践する。

④子ども部屋には、テレビ・パソコンは置かない。ゲーム機を与えない。

⑤家族でメディアを上手に使用するルールをつくり、守る。

良いとされている早期教育テレビも含め、あふれかえっているメディア世界の中で、今まさに親としての賢い選択と行動が問われています。テレビを消して、親子で自然の中を散歩したり、外遊びをしましょう。パパの膝の上では絵本を読んでもらいましょう。目と目をしっかりと合わせ、楽しいおしゃべりをしましょう。子育ては最高に幸せな時間です。思いっきり楽しみましょう。

 

(建治)