学習だけでない、親子の心が育つ場所 3年生Y.Oくんのお母さんの手記

生後七ヶ月の息子を抱っこして、三鈴学園にお伺いしてから早や九年、この四月から息子も小学四年生、十月には年齢も二桁の10歳になります。

 最初は、私の膝の上に座って受けていたレッスンも、幼稚園の入園を機に、息子は一人で椅子に座って、私は後ろから見守りながら、一緒にレッスンを受けていました。小学生になった今、一人でカバンを持って「じゃあまた後でね!!」と手を振りながら教室へ向かう後ろ姿を見ると、本当に成長を感じます。

 私たち夫婦にとって、息子は初めての子どもで、いまだに子育ては手探り状態です。育児書や教育関係の本は、読めば読むほど、理想と現実とのギャップにため息をつくこともあります。そんな時に毎週いただく「幼児教育・ジュニアスコースだより」、月に一度いただく「三鈴学園だより」に、はっと気づかされることがあります。そこには、学習について書かれている事もありますが、主に心の育ちについて書かれています。はっと気づかされる度に、そこに書かれている文章を息子に読んだり、自分自身を振り返ったりしています。

 今年度の7月の学園だよりに、建治先生が「みんなのために働くこと」というタイトルで書かれている文章があります。最後の方に「みんなのために働くことが、どれだけ気持ちが良く、幸せになれるかを、体感に言葉を添えて確固たるものにしてあげましょう。」とありました。このお便りをもらった数週間後に、息子は3年生の初めての通知表を、もらって帰ってきました。先生のコメントに「お友達の為には労力を惜しみません。常に相手がどうしたら喜ぶかを考えるアイデアマンです。」と書かれていて驚きました。数週間前に「こんな風に大きくなって欲しいな。」と思って読んだ文章のとおりに、息子が育ってくれていることが、とても嬉しかったです。
 これも折にふれ、私自身を振り返らせてくれたり、何気なく息子に「こんな人になれたら素敵だね。」と読んでいたお便りのおかげだと思います。

 息子は、三鈴学園ではピアノのレッスンも受けています。コンクールにも出させていただいて、賞もいくつかいただきました。しかし、いつもコンクール直前まで、なかなか曲が仕上がらなくて、その度に、担当の先生をハラハラさせています。今年度、コンクールで良い成績を修めると、受賞者コンサートに出場する事が出来ると、先生からお聞きしました。その時先生が「コンサートに出られるといいなー。」と言うと、息子は軽く「うん!出るよ。」と言うので、3人で笑って、その日のレッスンを終えました。その日から、練習も頑張っていましたが、「コンサートに出て、みんながすごいねー。上手だねー。って言っているのを考えながら寝よう。」とイメージする事も度々していました。

 息子に良いことがあると、先生方は「おめでとう!」「よかったねー!」と皆さん声を掛けてくださいます。毎回、本当にたくさんの愛情をかけて育てていただいていると実感します。難しい曲の壁に当たりながらも、逃げ出さずに毎日ピアノに向かうのは、この経験と愛情が、励みになっているからだと思います。日々の積み重ねが実を結ぶということ、そしてそれには大勢の人の支えがあること、これから先の人生にとっても、三鈴学園での経験が、息子の大きな財産になると思います。

 小学部のレッスンで毎年、1つのみかんには「おいしくなってね。」とか「かわいいね。」などプラスの声をかけ、もう1つのみかんは、無視をして、一切の声掛けをしないという実験をしています。今年も息子は、その2つのみかんが、それぞれどうなるかを見ています。そんな息子の2学期の通知表の先生のコメント欄には「笑顔と挨拶は校内ナンバーワンです」と書かれていました。3学期、そしてこれからの小学校生活でいただく通知表には、なんと書かれているか楽しみです。